DDの備忘録

幸せに推したい

「浪費図鑑」を読んでみた

先日SNSで偶然見かけ気になっていた本を最寄りの書店で見つけたので購入。軽い気持ちで読み進めたがあっという間に一気読みし完読してしまった。それくらいこの本は私にとって強く共感し、笑えて、そして少し浪費に前向きになることができた。ぜひあらゆるジャンルの同志たちにも読んでいただきたい。その気持ちの高ぶりそのままに久しぶりに140字のツイートではなくパソコンと向き合っている次第である。

 

その本は劇団雌猫という女性サークルが執筆した浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―|小学館というものである。

2017年8月13日に初版発行、Twitterで即座に話題となり緊急重版決定。

「これは浪費ではなく愛なのです」という帯のメッセージはかなり衝撃的なのかもしれないが浪費癖のある私が手に取りレジに向かうのは一瞬の出来事であった。

 

この本にはあらゆるジャンルのいわゆる「オタク女性」の浪費の実情が掲載されている。

ジャンルはソーシャルゲーム、男性/女性アイドル、声優、お笑い、宝塚、ディズニー、V系、ホストなど。世の中には沼しかないのか…と頭を抱えたくなる。

私にとってそれぞれの浪費告白はそれぞれのオタク界隈の実情がわかり非常に興味深いものであった。私の畑は男性アイドルなのだが、どのジャンルにおいてもオタクは本気で本当に愛おしくなる。純粋に推しを金というツールを用いて推しているだけなのだ。金がなければコンサートのためのチケットも買えないし、会場に向かうための新幹線にも乗れない。ペンライトもうちわも買えないのだ。その当たり前のことに後ろ指をさされる現実がある。「本気でアイドルと付き合えると思っているの?」とか「1枚の写真のためになぜそこまで」と言われることがあるのも事実なのだと思う。

しかしこの本のなかで自分の趣味を赤裸々に語ってくれている彼女たちは違う。本気で推しているがゆえの浪費なのである。本気で浪費しているからこそみんな後悔はしていない。とにかくすがすがしいのだ。またオタク特有のウィットに富んだ言い回しが多く何回も声に出して笑ってしまって劇団雌猫さんらの編集にも頭が上がらない。こんなに他人の浪費話を笑いながら知ることがかつてあっただろうか。

 

私も男性アイドルのためにたくさんの浪費をした。というか現在進行形でしている。私はいわゆる「DD(誰でも大好き)」という推し方に近く、事務所関係なく顔が好みで歌とダンスをかっこよくパフォーマンスしている彼らが大好きだ。コンサートに行くためにチケットをとり、地方公演であれば開演時間から終わる時間を予測し日帰りなのか前乗りなのか宿泊なのかプランを練って夜行バスや新幹線を即座に予約する。年末年始夏季休暇の時期であれば瞬時に会場最寄駅にできるだけ近いホテルの空室を探しブッキングする。リリースイベントの度に知らない土地のショッピングモールに行くために何時間も電車に揺られる。有給休暇をすべてイベントやコンサートで消費する。3形態も4形態もある難解なCD形態を何回もサイトを見て確認し、販売店舗ごとの特典を把握する。アイドルとのツーショットのためにCDも10数枚買うし、遠征もする。中身がランダムに売られている生写真をダブり承知で大量に買うのだ。生写真に関して想像が難しい方はプロ野球チップスを買うのと同じようなものだと思ってほしい。

どんなに浪費だとわかっていても買わずにはいられないのだ。推しを一目でもみたいし、少しでも多くイベントに出て認知してもらいたい。応援しているということを知ってほしい。生写真は彼らの成長記録であり2度と同じポーズ、服装、表情は存在しないのだ。なにより、応援してだんだんコンサートの会場が大きくなっていったり、ドラマやアニメのタイアップが増えたり、テレビや雑誌での特集が増えたりするといった成長をみることができるのが快感なのだ。当の本人たちからすると気持ちのよくない表現だと重々承知しているが「支えることができている」という達成感と幸福感、優越感が堪らない。

私は彼らに幸せになってほしい。笑顔でいてほしい。おいしいものを食べてほしいし、欲しいアクセサリーや服を我慢することなく手に入れてほしい。いつまでもアイドルとして誇りをもって輝いていてほしいから私は今日もこれからも浪費をやめないのだと思う。

 

浪費ときくとネガティブなイメージしかなかったが、この本を読んでここまで熱中できる生き甲斐があることもまた幸せなことなのかもしれないと感じる。実際、貯蓄はないが告白してくれている女性たちは推しのために明るくたくましく生きている。私もこれからも生活に支障が出ない程度に全力でアイドルを推していこうと思う。来月のクレジットカードの引き落とし額はまだ見ていない。